レポート:Lesson17 カナダのホームスクールってどんな感じ?(2022・9・29)

テーマ「カナダのホームスクールってどんな感じ?~
      一緒に探そうオルタナティブ教育」

カナダの教育は多様で寛容だ。

学校へ行くのも行かないのも自分で決めればいい。
  

ナビゲーターのベンソン(進士しんじ)万里子さんプロフィール
 

☆神奈川県生まれ。
大学卒業後、自然保護団体、環境関連の仕事に従事した後、渡カナダ。
オーガニック農場で10年近く農業に従事。
2015年、カナダ西海岸の離島、ペンダー島に家族で拠点を移す。
現在、オーガニック・ライフスタイルの一環として、3人の子ども(12,10,8歳)をホームスクールしたりしなかったり。
自由な気風と恵まれた自然環境の中で、のびのびとした子育てを試行錯誤しながらも実践中。
内容
1カナダのホームスクールの概要
2ホームスクールの学び
3心の問題についての学び
4ホームスクールをしたい方へ
5アフタートーク

ベンソンさんのお話はここから始まりました。

「究極」の質問…
カナダの先生は子供たちに「どちらがいい?」とこのような質問をします。

「食べる物はピザだけ、あるいはアイスクリームだけならどっち?」

「二度とシャワーを浴びないのと二度と歯を磨かないのではどっち?」

「映画を観るのが無しと音楽を聴くのが無しではどっち?」

「旅行するなら過去、それとも未来?」


どうしてこのような質問をするのでしょうか。

 それは、現実と関係ない質問を楽しんで答えることで、

 自分の意見をいうハードルが下かります。

 答えることをこわがらない、いざというときまちがえないようになります。


1ホームスクールの概要


カナダのホームスクールの歴史…

1960年代 公立学校システムに対し、権威への反対が始まる。

1970年代 オルタナティブスクールができてきたが、
     公立の学校の権威化で子供を学校に登録しない
     ホームスクール運動が始まる。ヒッピーなども。
 1976年 Natural Life発行
     John Holtのnewsletter「Growing Without Schooling」

  なぜ、カナダの人はホームスクールをするのでしょうか?
   もともとクリスチャンの国、聖書を教えたいが始まりでした。
   今もいますが、少ないです。よく聞くのが
   ・学校が遠い。
   ・学校が子供に合わない。⇒増えている。
   ・健康上の理由。
   ・突出した才能を伸ばしたい。(音楽、アスリートなど)

ベンソンさんがホームスクールを始めたきっかけ…
 あるとき、お子さんが「学校がつまらない、退屈」と。それで学校で何しているの?と聞くと、「ぬり絵。クリスマスはサンタクロース、イースターはバニー、」
 つまらないを繰り返す…何で学校に行ってるんだろうかと思いました。
 ホームスクールをしている友人リサさんに相談しました。リサさんは7人の子持ち、仕事に、マラソンにとスーパーママです。
 島は学校がひとつです。初めてホームスクールの集まりに参加しました。
「いい感じ」でした。他の方に「何でホームスクールを選んだのですか」と聞くと

 その方が「子供に合う」

 お母さん方の様子から学校に行かず、ホームスクールをするのは普通なんだと感じました。

カナダのホームスクールのしくみ…
 ブリティッシュコロンビア州は他の州に比べて進んでいます。
 学校に登録してホームスクールを開始できます。先生がチェックします。教材は有料で注文できます。年に一回、ホームスクールで学んだことを子どもが発表します。

 ベンソンさんはホームスクールを始めましたが、やがてお子さんが家にいると「つまらない」と学校へ 簡単に切り替えられます。

 コロナ禍でオンラインになり、現在は終了しましたが、子どもたちがマスクをするのがいやだとしばらくホームスクールを続けました。今は全員学校へ行ってます。このような流動性がとてもいいと思いました。それは、州の法律に明記されてます。

ホームスクールの学びのよさ…
 ホームスクールは簡単ではないですが価値があります。カリキュラムに沿って全員が同じことをするのは不自然です。日本の子どもたちのドキュメンタリーを見ると胸が痛みます。「何でこんなに勉強をするのか」と。

 ホームスクールでは自分の時間が自分で作れます。遊びたいときに遊べます。

フォレストスクールがあります。
先生とビーチで遊びます。ベンソンさんもボランティアで参加しました。
枝を集めて自分たちで作った「小屋」で一晩寝る。ナイフ、火などちょっと危なそうなこともします。

 ホームスクールをしていると孤独になりがちです。でもそこでは自然の中で親同士のコミニケーションもとれて良かったです。
 

進路について…
ブリティッシュコロンビア州では
  ①学校に登録⇒チェック⇒卒業証書がでる
  ②政府に登録⇒完全にフリー⇒卒業証書はない
  ・カレッジでクレジットをためてブリティッシュコロンビア大学進学
  ・認定試験
 大学によって違いますが、進学の道があり、ホームスクールだからといって行けないことはありません。むしろホームスクールの子の方が自分で考える力があるとコメントする大学もあります。

ホームスクールサポートプログラム…
 学校に登録するホームスクールが増えています。現地の学校で登録できなければオンラインでみつけて登録することも出来ます。”セルフデザイン”サイトのプログラムが人気ですがすぐいっぱいになるそうです。
 やることを自分で選べます。いいアイデアがあれば、もっとつっこんでいけます。

こんなプログラムがあります。
〇First nathion対象で文化の独自性を大事にするプログラム
 インディアンのダンス、サーモン料理、ベリーの保存方法など

〇パーソナルソーシャル
 クラスの中でもっと感情を話していこう。
 感情を色にする
  赤=怒  緑=平和
 入り口を色にすると感情を話しやすくなります。
 たとえば、今の気持ちは赤と答えた子に 
  理由を聞くと「弟がずるい…」と。話をひろげられます。

〇センスオブワンダー 特に気に入ってます。 
 目の前のものを観察
 興味からはいると全く違います。
 例えば子供が「このキノコは食べられるの?」 first nathionの方が教えてくれます。

2ホームスクールの学び
ある日の子どもたち…
 ディスクゴルフをする
 海でただ寝る。シュノーケルをつけてるけど何もしない。
  冷たい海の中に入るのが好きと。
   一緒にやってみた。気持ちがいい。
 
  

 野生のベリーの採取をする
 ロープの結び方を教えてもらう

 

ホームスクールの助けになる本…
・「365日アートをする本」  日本からきた母が買ってくれました。
  子どもたちがアートをつくるヒント集


・「Drawing with children」 線と丸の組み合わせでコツをおしえて後は自由に描くヒント集。誰でも楽しく絵を描けます。


いろんな課題…  
 ・ミイラの作り方を調べよう
  ネットや本で調べて、実際にミイラになってみるなど。
 ・パスタの強度を調べよう
 ・森で太陽系の模型を作る。こんなに遠いんだと実感しました。

 ・ニュースレターを作る。
 書きたいことが先にたくさんある、楽しいからスペルを自分から学びます。

 ・オンラインで動物を演じる。

 ・自分の顔をかこう、絵が苦手な子は半分コピーすればいい。

 ・動物の環境適応
   ドラマ仕立て 先生がサポートする。

 ・西海岸のカリブーの減った犯人は狼か?先生のサポートで
  狼は悪くない、政府のヘリコプターからの銃殺の政策にクラスで反対、書名運動をする。

ガルフ諸島の学校は週四日。
夏休みは二か月以上あり、自分で目標をつくりました。
 「どうでもいい」目標でもOK
  ・ムーンウオーク
  ・マジック
  ・ロックピッキングなどなど
     「You Tube大学」でどんどん見つけ学んでいきました。
知人の息子さんは…
アイスクリーム屋さんをやりたい


自分でお金をためてアイスクリームマシンを購入。家族で話し合って、実際にファーマーズマーケットに出店し、人気店に。ビジネス化しました。

社会、コミニティ、環境とつながる…
小さい島に住んでいるのでコミニティと繋がっていると実感します。
・年配者がとてもサポートしてくれます。母子で野球の練習をしてたら、たまたま通りかかった顔見知りのおじさんが教えてくれました。

・絵のプロが「次の世代に伝えたい」とアトリエによんでくれました。

家族での学び…
親も子どもと一緒に学ぶ…
・子供を政治に巻き込むのはよくないという意見もあるかもしれませんが…
 環境問題にすごく関心があり、子供たちにも感じて欲しい。
 一緒にデモに参加しました。他の人と交流するなかで、
 「子供だからといって自分の意見を言っていいんだよ」と伝えられたと思います。

・親の仕事を見せる。大工の仕事を生活の中で子供に見せました。

・家族で読書会
難しい本でも、一緒に読みます。

3心の問題についての学び
・トラウマ、ストレスマネージメントなど…時には逃げることが必要と。

  つらいことを「大丈夫、忘れなさい」と言われますが、出来ません。
  科学的ビデオをみてると、「かんばれ」もごまかしと。
  
  脳と体の反応が科学的に解明が進んでいます。
  脳が自分を守ろうとする反応があります。

・がんなどの病気に対しても一番有効な方法は
 心と体のつながり 
 マインドフルネス。自分の心の状態が体を治す、そのつながりが貴重な発見でした。

・「いじめ」へも繋がるのでは
 どんなことが脳におきているのか
 加害者の心理と被害者の対処


 「自分におきたことは問題ではない。どう対処するかが問題だ」


…母子の会話
  お母さん:自分がツライ時はどう対応する?
  娘さん:おいしいものを食べて、お母さんがハグしてくれる。

 確かに…お母さんも体調が悪くても子供にハグされて治ってしまうことがあります。…

クマのプーさんより
「自分が思っているより、自分は勇気があって強くってスマートなんだよ」

あるキャスター
「魂を持ち上げてくれる人とだけ関わればいい。」


 かつて、自分の英語の文法の先生がこわくて嫌いでした。
 できないと黒板の前に立たされて英語なんてキライ、学校へ行きたくありませんでした。

「失敗していないのは何もチャレンジしていないことだ」(ルーズベルト)

 あの先生は何だったんだろう?英語圏に住んで今も文法はメチャクチャだけど何の問題ありません。


ポジティブ思考を…
自分を励ます…

ホームスクールを始めた頃、疲れて
子供が三人いて、クレージーで…大変でした。

お母さん、お父さんがハッピーになること。
  自分の時間、自分のスペースをもとう。

その中で自分が満たされる何かをすることが大切だと感じました。

エクササイズ ①~③で自分が子育てに関わることをことばにして比べてみる。
 目標が明確になります。始めたばかりですが面白そうです。
 お母さんだけではなく家族でやります。
①過去  
②大事なもの
③未来


自分を育てていこう。
①睡眠 忙しいけどちゃんと寝る。
②境界線 個人のスペースをまもる。
 親子でも境界線があります。越えるとツライです。
③儀式 
 同じようなことを繰り返すことで、自分の原点に戻ります。
 例 朝必ず散歩する、運動する。
   子供がめちゃくちゃになってるとき、三分間黙る
    

4ホームスクールを始めたい方へ
ガッツフィーリングを信じる…
 子育て、ホームスクールについて周りの人はいろいろゴチャゴチャいいます。日本よりも少ないかもしれないですが、カナダも
  学校へ行かないと「社交性は?」と言う人もいて面倒です…。影響されてやってみても「ちがい」ます。
 それで、外野は無視しようと。ガッツフィーリングです。

「自分が親になったその日から先生になった。その日から出来ている。間違えてもいい。」(アン・キャンベル)

「したことで後悔するよりもしなかったことで後悔することの方が多い。だからもっと冒険して夢をもっていかなくてはだめだ。」(マーク・トゥエイン)

「この世の中が嫌だと思ったら自分で変えればいい。」(ガンジー)

「終わるまでいつもそれが不可能にみえる。」(マンデラ)

「自分を囲んでいるものは全部、世界が学校だ。」(ワシントン)

楽しい方がいいですよね。そうじゃなくては何で生きてるの?になっちゃうと思います。

自分に合ったオルタナティブ像がみつけられるといいですね。


5アフタートーク
スタッフ;心と体の関係について。腹痛から学校に行かなくなる…不登校によくあります。学校がツライから体が守る反応ですね。

ベンソンさん:不登校という言葉自体がレッテルです。

スタッフ;「不」の字が嫌ですね。

参加者:アスペルガーの子、幼稚園はとてもいいのですが、来年は小学校です。…合うところが見つかりません。ホームスクールも視野に入れました。学校は未来を不安にするシステムです。カナダがうらやましいです。

ベンソンさん:ディザビリティの子を学校の中でどうやっていくかのセミナーがあります。カナダでもインクルーシブと言う先生も出てましたが、カナダも子どもを分けててまだまだです。
 日本は受験戦争で、大学の名前が優先。カナダは何を学んで何が専門で何が出来るかをみます。

スタッフ:枠にはまらない子は結構苦労してます。

ベンソンさん:学校に合う子の方がまずくないかと。むしろ心配です。

スタッフ:サラリーマンなら合うかもしれません。デンマークの学校では、日本人が日本の教育を持ち込んで困ると言います。例えば話を聞くだけで発言しない。なぜしないのと聞くと「していいの?」と。宿題を出してほしいと親から頼まれます。それでは自主的に勉強しなくなります。

ベンソンさん:カナダはどうでもいいことでもディスカッションします。ディベートも小学校の頃からさせます。

参加者:小1の子の学校の先生は姿勢がちょっと悪くても注意します。あるとき「机の上にある鉛筆をしまいなさい」と。しなかった子にはバンバン机を叩いて注意しました。
 その先生は全員の悪いところを挙げます。

スタッフ:そんな先生がまだいるのですね。

ベンソンさんはTEDの「100日間拒絶チャレンジで学んだこと」というYouTubeの動画を紹介。

「 6歳のとき、先生は教室で他の子のいいところをあげさせ、言ってもらえた子に贈り物を渡します。ところが言われない子が3人。自分もその一人。大勢のまえで拒否された…泣きだします。チームワークを作るつもりだった先生、慌てて、「来年はいい子にね」と贈り物を渡されましたが…
 大人になり起業をしましたが、投資などを断られるのがとてもコワい…トラウマ。うまくいきません。自分を変えようと、毎日わざとダメだと言われることを頼む訓練を始めます。(動画のURLです。ユーモアたっぷりのスピーチです。https://www.youtube.com/watch?v=iwl-Pe0FbSg)」


参加者より:日本の教育の旧さにびっくりします。周囲にホームスクーリングを堂々とされてる方がいません…ヘンな親と言われても開拓者としてやっていきたいと思います。

ベンソンさん:ヘンな親、上等です!(笑)